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2017.08.29

歩行者天国と適応放散

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 イギリス・オペラというのはあまりクローズアップされないが、ギルバート&サリヴァンのオペレッタは英語圏で人気がある。その中でも日本で一番知られているのは「ミカド」である。ティティプという日本の架空の町を舞台としていて、登場する日本人の名前はおかしなものばかりで、死刑制度を風刺していて、貴種流離譚で、デウス・エクス・マキナ要素もあるという滅茶苦茶な怪作である。
 そんな「ミカド」を、20日に秩父、26日に新国立劇場でそれぞれ観た。20日のものは、ちちぶオペラ実行委員会というアマチュア団体と秩父市が主催しているもの。26日のものは新国立劇場の地域招聘オペラ公演で、びわこホールによるものである。それぞれ関係はなく、偶然この時期に同じ演目が重なったようだ。珍しいことである。
 ちちぶオペラ版「ミカド」は、2001年以降数回上演されてきている。何でも永六輔らの「ティティプ=秩父」説に着想を得て始まったもののようで、秩父を舞台とした話になっている。アマチュアによるもので、オーケストラもすべての楽器を集められずにシンセサイザーを採用していた。いきなり秩父囃子からスタートするのに始まる秩父ごり押しには少々気になったが、それも必然性のないものでもなく、むしろローカルなネタで笑いを取れているのがよかった。何よりもサービス精神旺盛で、ココ、プーバー、ピシュタシュによる3重唱を4度もアンコールを(半ば強引に)やったのには笑った。客層はオペラ・ファン(「ブラーヴァ!」って叫ぶ人)もいたが、普段はオペラを観ることもない人(映画と同じ感覚でまだ終わっていないのにさっさと帰る人)も大勢いたようだ。雰囲気がいつもと違って、客席と舞台が一体となって楽しんでいる感じが大変心地よかった。2008年に観たマリインスキー劇場来日公演の『ランスへの旅』を思い出した。笑っている子供もいて、あの子にとってはとてもよいオペラ体験になったのではなかろうか。
 その後に観たびわこホール版「ミカド」は、単品で観ればそこそこ楽しめるものだと思うが、どうしてもちちぶオペラの方と比較してしまうのが不幸だった。クオリティとしてはこちらの方が上なのだろうが、どうしても堅苦しく見える。一曲のアンコールもない。オペラだったらこれが普通なのだけど、オペレッタなのだからもう少しはっちゃけてほしかった。それと、なまじ字幕が見えるので歌詞を間違えるとすぐ分かるのだが、結構ミスが多かった。せっかくのコミック・ソングなのに歌詞を間違えると台無しである。急遽キャスト変更があったようなので仕方のない部分もあるのだろうが。
 歌詞はどちらも日本語によるもので、ギルバートの原詞を「超訳」していた。オペレッタなので自由に訳せばよいと思うが、びわこホール版の方がよりオリジナルに近いようだった。いずれにしても、一度聴いただけだとすぐ忘れてしまうので、日本語の歌詞を公開してほしいものだ。

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2017.08.10

双曲線とテーブルクロス

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 ローダン・シリーズのリブート版、「ローダンNEO」がついに出版された。7月から来年2月まで毎月1冊ずつ、第1シーズン全8巻が刊行される。ローダン・シリーズ初期の頃の話を、古くなった設定を現代風にアレンジして語り直すものということで、大変期待している。
 オリジナルのローダン・シリーズは世界最長のSFシリーズであり、日本版は一昨年に第500巻を突破した。売れ筋のシリーズとしてハヤカワ文庫SFの売り上げをを支えている。
 しかし、最近心配なのは、新規の読者を獲得できていないきらいがあるということである。長く続くということはそれだけ人気があり面白い証拠なのだが、逆にその長大さが途中参加を躊躇させる要因となっている。この事態には危機感を覚えずにはいられない。売れている現在はまだ大丈夫でも、固定読者が高齢化していくに従ってジリ貧となり、いずれは刊行が中止されてしまうのは目に見えているからだ。これはハヤカワ文庫SF、ひいては日本のSF出版全体を左右する重大事だと考える。
 昔は新規読者を獲得する仕組みがあった。100巻や200巻、300巻が刊行された際にはお祭りムードがあった。新聞やテレビなどでも取り上げられて注目されたし、『ローダン・ハンドブック』等の記念出版物が刊行されたりした。この出版物は、途中参加者むけの便利な入門書としての機能もあった。だが、400巻と500巻の際には、マスコミの取り上げも少なく、ハンドブックはついに出版されずじまいだった。
 特に第500巻『テラナー』は大きなターニング・ポイントであり、新規読者を獲得するにはまさに千載一遇のチャンスであったのだが、ほぼ何のキャンペーンも行われなかった。これには実に歯がゆい思いをさせられた。
 そんな早川書房が今になって本気を出してきたのが、この「ローダンNEO」なのである。著名なイラストレーターを起用したり、S-Fマガジンで特集を組んだり、これまでとは意気込みが違う。これは私としても応援しないわけにはいかない。ビブリオバトル等で紹介しまくって、一人でも多くの読者を開拓したいと考えている。

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